情熱、衝動、共感、そしてビジョン。
最も印象的だったプロジェクトのひとつは、写真家の田中誠一さんとアメリカのアーティストのマーク・コスタビとのコラボレーションです。二人とも素晴らしい才能にあふれた興味深い人たちでした。そのプロジェクトの結果が“TANAKA MASON KOSTABI”という本です。
この本はあえてコンセプトなしで制作されました。というのも、そのほうが本能的に各自の才能を融合させていくことができるというふうに考えたからです。それぞれのアイディアを話し合う場合もあるし、しない場合もあります。または一人に突然火がつき、爆発するように作業を始めるといった感じでした。有名人や友人たちが参加してくれましたが、その人たちのなかにはメイクをすること対して単純な拒否感を持っている方がいて、撮影が全く別の展開を見せたこともありました。“あなたがメイクをして、彼がペイントした”と人々は物事を型にはめて考えるのが好きですね。現実はそれほど単純ではありませんでした。
この本は私のメイクアップの店と同じように、見てすぐには理解できないかもしれません。少し不思議に思い、考えさせられるかもしれません。
もうひとつの思い出深い仕事は、私自身の過去と現在の融合を素晴らしい出版社とのコラボレーションで実現した“Makeup THE ART OF BEAUTY”の創作です。
彼女たちも一般の人と同じように私生活があるということを理解してあげましょう。彼女たちとの距離感を感じたり、彼女たちが不機嫌だったりしても、それはあなたのせいではないのであまり気にしすぎないように努力してください。そういうときには彼女たちのムードを良くしてあげるのもあなたの仕事です。あなたの気分が優れないときに相手にしてほしいと思うことと同じ心遣いをしてあげてください。彼女たちがカメラの前でお姫様になりきるためには、お姫様の気分にならなければいけないのですから。
アイディアがなかなかまとまらないときには、決して焦らずに気持ちに余裕を持ってください。まずは後で簡単に変えられるメイクをしてみて、ヘアスタイリストには、「アイディアをもう少し練りたいのでヘアの完成したイメージを見たい、先にヘアをやってもらえますか」などと説明してください。不安になったときも自信のなさを決してモデルに気づかせないようにしましょう。モデルに安心して大切な顔を任せてもらえるように振る舞わなければなりません。
今まで夢に生き続け、それらを実現できた私はとっても幸運でした。そしてこれからもずっと神様が見守ってくださることを祈っています。今後は、アートやコスメに携わりながら、映画を含むスケールの大きなさまざまな創造的プロジェクトのなかでたくさんの人とチームを組み、経済的により成功するビジネスを組み立てていきたいと思います。
私の夢としては、ニューヨークとパリに、友人たちが泊まりに来ても歓迎できるようなもっと大きな家を持ちたいということですね。
十分に下準備を調えておけば何も心配する必要はありません。まず最低でもある程度の英語が話せることが必要です。私もニューヨークに移る前にそうしたように、まず下見に来る機会を設けてから越してくるほうがいいでしょう。そのときに、ニューヨークのメイククラスを受講してみるのもいいと思います。最も重要なのは、質の高い作品ポートフォリオを日本にいる間に作っておくことです。ポートフォリオは、アーティストとしてのあなた自身のようなものですから、ビザを申請する際にもポートフォリオの有無、その質が大きくものを言うことになります。
私がニューヨークに移ったときは、すでに7年のキャリアとパリで成功していた実績がありましたから、私のポートフォリオは十分に充実していました。最初のエージェーントもニューヨークに来る前に見つけて、ポートフォリオを郵送して見てもらいました。
“Le Book”という本がありますので、入手して見てみるといいでしょう。メイクアップに関わるエージェント、メイクアップアーティストの情報が掲載されています。ご自分で調べてみてニューヨークに下見に来る際にアポイントメントをとってみるのもいいでしょう。
芸術や文化を通して内面を磨く努力をしてください。メイクのテクニックを磨くことと同じくらい重要なことです。そして、とにかく手を動かし、練習してください。練習をすればするほど上達します。メイクをする機会があればすべて逃さず手に入れて大切にしてください。モデルを見つけられないときは自分の顔でいろいろと冒険や実験をしてみてください。
また、デッサンや絵の具を使って絵を描くことは色彩感覚や技術を磨くのに大変役立ちます。自分の慣れているスタイルを繰り返すだけではなく、毎回少しでも違ったふうにメイクするように意識してみてください。型にはまることなく自分自身の可能性を追求しましょう。